トサキン保存会西日本支部「2006年研究会活動報告」

トサキン保存会西日本支部の研究会活動の状況を簡単に紹介します。
(一部の枠付きの写真は、クリックすると拡大します)

会員のための活動ですので、実際にはここに公表出来ない技術や情報などもあり、掲載内容は活動の一部です

(記事は研究会開催後に順次追加する予定です)。

丸鉢ライン

当歳魚研究会(品評会) : 広島県福山市加茂町の小川支部長宅にて
                        (2006年9月17日10:00〜15:30)
 台風が近づいており、遠方からの参加も難しい状況でしたが、研究会は会員14名と一般の見学者6名の参加で行われました。
 また、当日の新規入会者も2名ありました。

 当日は風も強く、天気が非常に心配されていましたが、朝から一日中、ほぼ曇りがちで、当歳魚の審査講評の時に一時的な降雨があった後は、すぐに回復して、支部長の飼育状況の見学なども、滞りなく行われました。
 その他に、共同購入のFRP洗面器の配布や、閉会後に次回品評会の準備の打ち合わせを行いました。
当歳魚品評会
 審査では、出品魚37尾の中から、上位10尾を入賞として順位付けを行いました。入賞魚はもちろん、各出品魚について支部長から解説があり、各魚の長所や欠点、飼育上の課題を指摘するなど、非常に参考となる内容でした。
 11月の品評会に向けて、これまでの飼育を検証する場として、会員各自から質問も多く、土佐錦魚らしい「品」を保つために、サイズ、顔の尖りの維持、腹の出し方などについて、特に重点的に説明がありました。
 また、品評会では当日の状態が全てであり、その場のコンディションの維持はもちろん、二歳・親になって初めて評価される魚については、当然そうなってからその部門の品評会に出さねば評価されない事、そのため、今回は評価が低いが次年度以降期待が出来る魚についても例示されて解説がありました。
分譲会
 春の分譲会にくらべて出品数は少なかったのですが、親魚4尾、二歳魚4尾、当歳魚4尾の分譲が行われました。
 分譲魚についても、支部長から、種魚としての良い特徴や、掛け合わせる際の注意点についての解説があり、それらも参考に、各自が気に入った魚を選んでいました。
 今回も希望者が重なるものはジャンケンとなり、会員の好みや見方も、やはり共通してきて、全体のレベルアップを感じました。
飼育状況見学
 【ガクトの褪色
6月18日の褪色中のガクト
 支部長の飼育状況見学では、なんと言っても最大の驚きは、ガクトが色変わりを終えた姿です。
 実は昨年の秋にも褪色の兆しがありましたが、年を明けて元に戻っていました。また、前回の研究会の時には再びはっきりと褪色が始まっていて、この夏の褪色は間違いないと思っていましたが、この模様には驚きでした。
 褪色中の感じから、素赤に変わるのでは・・・と支部長も感じていたようですが、非常に目を惹く、鹿の子更紗になっていました。

 各ひれには絞り模様が入り、特にガクトが他の土佐錦魚を大きく上回る特徴的に大きい部位である「胸ビレ」、「尾の返し(袋)」、「尾の後ろ」には、膨張色である白をバランス良く散らばせ、背の独特の鹿の子更紗とあいまって、これらの特徴をさらにひきたてる配色となり、本当に「魅せる魚」だと感じました。
 らんちゅうの飼育家の間では、品評会前には魚を見せたがらないという事があるようですが、このガクトには、そんな小手先の技は全く無用で、誰がどうみても驚嘆の魚です。

 写真を撮影していて、いつも思いますが、非常に安定した魚で、写し易いのですが、どうしても実物の良さを撮影しきれていません。
 「誰でも撮影しやすいが、誰もが撮影しきれない魚」ではないかと思います。
支部長の当歳魚
 会員の当歳魚の審査後、支部長の当歳魚を見学しました。こちらは会員の出品魚とは比べ物にならない程レベルが高く、参加した会員は皆一様に驚きの声を上げていました。
 どの鉢も顔の尖りは尋常ではなく、腹が十分出たものばかりでした。特に目幅の狭さが際立っており、これが鮎餌のみで育てている魚かと疑うほどでした。
 また、丸手でありながら、目幅が細く、目先があり、顔の占める割合が小さい事で、非常に上品に感じました。
 特に右下の魚は理想的な姿をしており、泳ぎも安定していて、写真は1枚しか撮れなかったのですが、ご覧の通りの写りです。こちらも、実物はさらに良いのですが・・・。

 その他は無作為に洗面器に上げて頂いた魚です。皆、粒揃いの魅力的な魚です。

丸鉢ライン

選別済み稚魚分譲研究会 : 広島県福山市加茂町の小川支部長宅にて
                        (2006年6月18日12:00〜17:00)
 研究会は15名の参加で行われました。選別済みの稚魚は、孵化後2週間のもので、約40尾×10鉢のガクトの仔(サードエディション)と、その他の選別済み4鉢と、また無選別も4鉢分が分譲されました。
 今回も、分譲の他に、ミジンコの採集とイトミミズの採集を行い、それぞれの給餌量を実演しながら説明がありました。
泳ぎと尾肩
 支部長宅では、どの鉢でもぐるぐると稚魚が縁を泳いでいました。共通する特徴として、尾肩が柔らかく、泳ぐ時には後ろにかなり絞っています。

 写真右はガクトの仔1stエディションです。系統的な判断から、初期の選別で、尾の角度が110°もあるのも残したそうですが、この様に後ろに絞ってくるほどで、泳がせる事の重要性と、魚に合った選別基準も大切である事を感じさせます。
換水方法
 鉢の管理は、この時期はまだコケがそれほど気にならないので、ワイヤーブラシは使わず、普通のプラスティックのブラシで表面のコケを取るそうです。
 換水は、栓を外して底水を抜き、稚魚を入れたままの状態で、汲み置いた更水をホースで足していきます。
 ホースは縁に沿わせ、水流を緩め、サイフォンの原理でゆっくりと注水します。
イトミミズとミジンコの給餌量
 このサイズの稚魚で、丸鉢に20尾が入っていますが、イトミミズを1日分で、写真のとおり百円玉くらいの塊をばらさず、そのまま与えます。もう少し小さいサイズの稚魚には少なめにして調整をします。
 研究会の折には、写真の状態で、2時間後には綺麗に無くなっていました。
 また、ミジンコの給餌量は、1鉢に角砂糖1個分程度の大きさの塊で与えます。多すぎると鉢の酸素を消費し、ひどい場合には酸欠や鰓めくれを招きますので、少なめに回数を多く与えるのが理想です。
ミジンコとイトミミズの採集
 ミジンコは、同じ池でも湧いている場所は限られていて、水流や風向きが影響するようです。また、場所によって、サイズや種類も異なる事があるので、求めるものがどこにいるか、確かめてから採集します。

 イトミミズは泥ごと採集して、分離しますが、写真のように絨毯のように一面に湧いていても、獲れ方には違いがあるようです。端の方に固まっているものや、意外と小さな塊の方が獲りやすく、分離後の量も多いようです。なお、採集には川下から行うと濁らず獲り進める事ができます。

 飲食店や理髪店などが周囲にあるどぶにいる事が多いようです。
二歳・親魚
 褪色が少しずつ進んで、徐々に親魚や二歳魚も変化が見られますが、どの魚も顔の尖りと尾の大きさで、他の追随を許さない事をあらためて感じさせます。
 写真左の雄は特に後ろが大きく、丸手でバランスの良い魚です。右の雌は目先の鋭い反転が大きな魚で、共通して鱗の目の細かいきれいな肌をしています。

丸鉢ライン

無選別稚魚分譲研究会 : 広島県福山市加茂町の小川支部長宅にて
                         (2006年5月21日12:00〜17:45)
 研究会の出席者は12名でした。無選別の稚魚は、孵化後2〜3週間のもので、約6千尾(3腹)を16名で分けて持ち帰りました。持ち帰る魚は洗面器に分けておき、くじを引いて決めました。
 今回は、分譲の他に、ミジンコの採集と稚魚の選別方法、餌の量とやり方など、全て実演を行った上での質疑応答形式で行われました。
ミジンコの採集
 支部長宅から僅か車で5分程度の貯水池に、タマミジンコ(Moina:モイナ)が大発生しており、会員で採集を行い各自で持ち帰りました。
 稚魚には一般のミジンコ(Daphnia:ダフニア)より、さらに小さいタマミジンコが適していますが、これほどの量を一度に採れるとは驚きの一言です。
 昨年までのこの池は、このようにミジンコが採れる状態ではなかったのですが、冬季に一度湖底を干し上げた事と、もう一つ条件が重なってこのような大発生となったそうです。
 採集は、観賞魚用のネットを竹ざおにくくり付けたもので行いますが、水中を左右に数回往復すればゴルフボール程度の塊が採れていました。湖岸からも良く見れば水中にうねりとなってタマミジンコの塊が浮遊しているのを確認できる状態でした。

 右の写真はバケツに採った物で、輸送は酸素詰めしたビニールで丸一日は大丈夫です。エアレーションするとかえって弱り、死ぬものが多いそうです。
稚魚の選別方法
 この時期の選別は、尾の角度を主体に行います。ただし、「両親骨の開き具合を60〜90°を残す」と言っても、実際には親骨が弓なりになっていたり、将棋の駒のような逆ホームベース型だったりで、なかなかイメージ通りでは無く、支部長の選別の実際を見て、残すべき選別のぎりぎりのラインを見る事が出来たのは、参加した会員にとって非常に参考となったようです。
 選別時のワンポイントとしては、泳いでいる魚を見極めるのは熟練が必要ですので、選別盆(白いバットでも可)に稚魚を取り上げてから、5分程度静かに待って行うようにします。

 右の写真は選別で残したものですが、この時点では尾芯はほとんど見えず、桜尾に見えます。この時点で将来尾が大きくなるタイプを見分けるポイントなども説明がありました。
皺抜きの実演
 会員から質問があり、急遽、尾の皺抜きの実演を行う事となりました。
 支部長の所では、手術で尾に手を加える事はあまりしないそうですが、今回あえて行って頂きました。
 皺抜きは、成功して改善する場合と、そうでない場合もあるので、まず、実行する前に判断が必要ですが、色変わりが終わっているところを抜くと、再生した尾は白くなるので、時期も重要となります。
 褪色前の魚を基本に、尾の成長が盛んとなり温度が十分となるこの時期から行うようにしたいものですが、改善の見込みの無いものには行わず、一方では「皺も愛嬌」と割り切るのも良い考え方だと言えます。
 さて、実際の皺抜きですが、左の写真の魚の尾芯わきの皺を抜きました。先の細く尖った毛抜きを自分で作成したもので、金座の後ろから引きちぎるように行います。出来るだけ細く、断面は粗い方が結果が良いようです。
 なお、写真の魚では、皺が抜ける確立は非常に少ないので、普段なら行わない魚だそうです。
人工授精とイトミミズの生息地
 夕方5時を過ぎて、下に掲載している写真の魚を撮影していると、洗面器に掬い上げる際に卵をこぼした魚がいたので、人工授精の実演を行いました。
 オスを右手に持ち、精子の出具合に合わせる様に卵を搾り出す感じです。
 支部長の人工授精の方法は、台所の流しの排水口に用いられるネットを下に敷いてこれに産ませます。卵が散らばって固まらず、掛け合わせや卵の量によってネットを取替えできるので都合が良いそうです。
 受精後は、30秒も経てば十分に受精しているので、これを水から引き上げて丸鉢に移しますが、ネットは上下を裏返し、卵をネットの下向きにして、メチレンブルーを入れて、プラ丸鉢で蓋をして孵化させます。
 なお、5日位で孵化する一番成績が良いそうです。


 イトミミズも順調に沸いており、国産のものが採れるうらやましい環境です。右の写真のように赤い絨毯が見られました。
飼育状況見学
 
支部長の所では、二歳魚を大量に減らしていて、全体的にもかなり数が絞られていましたが、その分、良い魚が厳選して残されているようです。
 また、様々なタイプが見られるのも特徴的で、特に一部分が際立って秀でている魚は、種親としての重要な働きに備えて残されています。

 4歳となったガクトも健在で、衰える兆しも全く無く、腹を押せば精子を出す状態で、次の産卵に備えていました。(写真左端)
 3歳では、昨年のトサキン保存会で7位(左から2枚目)と9位(左から3枚目)が、それぞれ返しも大きくなって、さらに非常に見応えのある魚に成長していました。
 右端は2歳で、癖の無いO氏の系統の特徴をそのまま現している魚です。品評会向きの丸手で尾の大きい魚です。
 その他、以下はいずれも二歳で、特徴的な際立つところを持っています。それぞれバランスが良く今後が楽しみな魚達です。

丸鉢ライン

二歳親魚分譲会 : 広島県福山市加茂町の小川支部長宅にて (2006年4月16日13:00〜16:00)
 当日は、出席者17名(うち会員16名)の参加で、二歳魚40尾、三歳魚10尾が分譲用に用意されて並びました。
 分譲魚の価格はその魚の評価によって様々ですが、二歳は2千円から8千円、三歳でも8千円から2万円までと、その品質に比較して非常に安価に設定されました。分譲希望の魚があれば、その洗面器に自分の名前を書いた札を置き、希望者が重なればジャンケンで決める方式です。
 希望者の多い洗面器には6枚の札が重なったりして、会員の評価や好みが非常に近い事が分かり、評価基準(=見る目)も一定のレベルにはあるようで一安心です。
 分譲会では、参加者の多くが、産卵に備えて希望の魚を3〜6尾確保して、満足して帰られたようです。
 また、参加者が分譲魚を選んでいる中でも、会員の質問に対する支部長をはじめ経験者のアドバイスが、会場のあちこちで飛び交っていて、感歎の合間にも談笑の絶えない賑やかな雰囲気でした。
 洗面器の中でも縁に沿って自由に泳ぎ、静止しても癖が無くきれいに極める「泳ぎの上手い魚」が、将来性が高い魚と評価すべき、との話などもあり、今年の選別や種魚の交配親の選定にも大いに参考となる内容で、有意義な時間となりました。
 また、支部長の飼育状況の見学では、このシーズンの飼育のポイントや、容器当たりの尾数、コケや水の管理、雨の影響など、話は尽きず様々な方向に展開して充実した内容でした。
 多くの品評会魚がその美しさを競うように存在感を示している中、やはり目を惹くのは4歳となったガクトです。綺麗な朝顔の切れ込み模様に縁取られ、円形に大きく張り出した後ろは、体長と同等な長さで、圧倒的な存在感です。
 写真では見え難いのですが、追星も鰓蓋まで激しく出現しており、全く衰える気配は無いようです。
 取り上げた小さな洗面器の中でも泳ぎは非常に安定しており、いつもながら極める魚で、写真に撮りやすい魚ですが、どうしても実物より劣った写真しか写せないのは、泳ぎを表せない静止画の限界を痛感させる魚です。
 写真右下端の魚は孵化後数週間でハネた魚だと思われますが、ほぼ1年が経過する完全な放任のバケツ(径は20cmで、非常に小さいもの)の濃い青水の中で、なんと、4尾が元気に生きていた驚きの状況を写したものです。

 土佐錦魚の強さを感じられました。

丸鉢ライン

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