土佐錦魚訪問記 2014

私が実際に見学させて頂いた飼育家の皆様の飼育環境などを紹介します。
(写真はクリックすると拡大します)

丸鉢ライン

野村様(太みの体位で迫力の当歳魚):高知県南国市(2014年11月1日)
 高知県の「土佐錦魚保存会」の会長の野村さんの飼育場を見学させていただき、歴史と伝統に裏打ちされた本場高知の実力に衝撃を受けるほどの印象でした。
 野村さんは、土佐錦魚の飼育歴30数年になる大ベテランで、サンルームを移築した飼育設備を中心に丸鉢とプラ舟がそれぞれ10数個の規模での飼育です。
 まず驚いたのは当歳魚の素晴らしい体位で、10cmに迫る迫力のサイズに、尾筒の太みが尋常ではなく、水平に広がる大きな金座まで、背下り良くしっかりと尾筒が押さえた金座に続く安定した大きな尾は、大げさではなく本当に感動するほどでした。
 外の角鉢の親魚 外の丸鉢には二歳魚  メインのサンルーム飼育場  野村さん(左端)
驚きの体位の当歳魚達! 尾筒の太みと金座に注目!  押さえの効いた親骨!  後ろの広さも十分!
 これだけの太い丸手でありながら、親骨が柔らかく泳ぎも安定しており、そんな魅力的な当歳魚がこちらの丸鉢にも、あちらのプラ舟にもまとまって何尾もいる状態に、実力の凄味すら感じるほどでした。
 「この太みを作るには初期のミジンコの給餌が大切で、孵化からの2か月間にどれだけ与えられるかが鍵」とのことで、「理想的には1日に6回程度与えられればベスト」だと言われていました。
 また、交配親としては、より早く大きくなる資質も持つものを優先的に用いるとのことでした。
当歳魚は丸鉢とプラ舟に プラ舟の当歳魚達  丸鉢の当歳魚達  餌を求め勢いよく近づく
エアー無しの外の鉢に2歳魚 室内ではエアーで親を2尾  丸鉢の親魚 丸鉢の親魚
 もう一つ驚いたのは丸鉢の用い方で、二歳魚では3〜4尾、親魚は2尾が入っており、当歳魚以外の飼育にも用いられているとのことでした。
 中には特大サイズの親魚が2尾も入っているものもあり、常時丸鉢で飼育することで、魚の出来が異なるとのことでした。
 餌は土佐姫で、当歳魚も7月には十分なサイズに大きくなっているため、ミジンコの後は親魚と同じサイズの土佐姫に変わるとのことでした。
 その他にも、色々と興味深い話を数多くお聞きし、普段見れないものも見ることができて、非常に有意義な見学となりました。
餌は土佐姫D 遊び心あるタイル縁の丸鉢 丸鉢の鳥獣害防止網  角鉢の壁面のコケ

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葛目様(浅い角鉢での飼育):高知県南国市(2014年11月1日)
 トサキン保存会西日本支部の会員の葛目さんの飼育場を見学させていただきました。
 土佐錦魚の飼育は9年目で、自宅に隣接した庭に砂利を敷き、丸鉢20個と角鉢10個とで飼育されています。
 飼育場は東西の方向に家が隣接して、南側にもマンションが建っているため、冬には昼過ぎのごく短時間のみの日照となる条件の中で、自作したフレームに鳥獣害防止のネットを張り、換水用には600L貯水タンク2個が設置してありました。
 特筆すべきは、水深の浅い角鉢で、浅いタイプは水深11cm、深いタイプでも12.5cmしかなく、入っている2歳魚や親魚は、あえて背びれが水面すれすれの状態での飼育としているそうです。
 自作の防鳥ネットのフレーム 南北に並ぶ丸鉢と角鉢  水深の浅い角鉢(11cm)  葛目さん(中央)
丸鉢には当歳魚4尾 粒揃いの当歳魚 6月下旬孵化の当歳  鉢毎に色々な系統
 当歳魚は、1鉢に4尾が基本で、鉢ごとに色々と異なった系統も見られました。自家産卵の開始が遅れて今年は6月以降になったとのことですが、イトミミズを与え続けた効果か、それぞれ十分なサイズと尾になっていました。
 また、朝顔形の丸鉢などの珍しい飼育機器も見ることができました。
 右下のフナ尾の土佐錦魚(ハネ)は泳ぎのスピードが速いので、泳がしたい魚と同居させて用いたとのことでした。
 更紗の当歳も散見される 色々な形質が見られる  朝顔形の丸鉢 水量が少なく重量は大きい
太みに優れる二歳雌魚 太みに優れる二歳雌魚 再生中の親魚 トレーナー用のフナ尾(ハネ)

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倉西様(自作の飼育槽等):広島県呉市(2014年7月13日)
 トサキン保存会西日本支部の会員の倉西さんの飼育場を見学させていただきました。
 土佐錦魚の飼育は7年目で、当歳魚は車庫の上に木製のテラスを自作して設置した18個の丸鉢を中心に計26鉢、二歳魚と親魚は庭先に100Lの角鉢を基本に10個程度の飼育槽での飼育です。
 飼育に関する設備など、様々なものを自作されていて、出来も玄人裸足の綺麗な仕上がりで、色々と工夫が見られ、飼育への熱意とともに大変参考となりました。
 車庫の上での丸鉢飼育 日照と通風に配慮した設置  自作の丸鉢は排水管付き  排水に配慮した木製テラス
 強風対策の重い置き板 自作の丸鉢は表面も綺麗  掛合せの札が浮く丸鉢  鉢毎に交配は全て別
 稚魚は、自作の綺麗な丸鉢に、掛け合わせ別に1鉢のみで育てる一子相伝のスタイルで、好みの「地味な魚:(癖が無く素直、大器晩成で長く楽しめる魚)」を、鉢数分の多様な遺伝子の中からそれぞれ残していく飼育です。
 稚魚は当歳魚で後ろが大きく前を極めた派手な魚よりも、尾が柔らかく成長とともに完成されるタイプが好みとのことで、この時期までは顔を重点的に見て、尾はあまり見ない選別を行っているとのことでした。
 稚魚は1鉢に15〜20尾が入っており、餌は今でもブラインシュリンプのみで、餌を控えた押さえ目の飼育を心掛けているとのことです。
 一番大きな稚魚(4/下:孵化)  中位の稚魚(5/上:孵化)  小さめの稚魚(5/中:孵化)  餌のブラインシュリンプ
重い木枠金網で鳥獣害対策 自作のモルタル製「角鉢」  角鉢の親魚(6歳雄)  左の6歳雄を洗面器で撮影
 2歳と親魚の飼育は、自作のモルタル製の100L角鉢を基本に行っていて、底面のコケのみを落とす飼育をされていました。
 川の傍での飼育となり、鵜が集団で飛来することもあったとのことで、水面から離れた高い位置にネットが来るよう、重量のある木枠でしっかりと鳥獣害対策もされていました。
 以前はらんちゅうを飼われていたとのことで、当時購入した400LFRP舟やプラ舟ジャンボ180L等は軒先の半室内に置いて、不要魚のストック槽として用いていて、ハネの稚魚は近所の子供の金魚すくい用等に提供し、喜ばれているとのことでした。  
特注の400LFRP舟  金魚すくい用のハネ稚魚 自作の木製「杉舟」第1号  譲ってもらった杉舟
 また、今年は木製の「杉舟」も試作されていて、「5月上旬から飼育を続けているが、水漏れも影響はなく、水温変化はモルタル角鉢と同様で非常に穏やか」とのことで、2か月経過した杉舟の壁面にはうちと同様に黒っぽいコケが付いていました。
 杉舟は、これまでに5舟を制作されていますが、一人での持ち運びが可能で、うちでの飼育結果も非常に良いことから、今回追加でもう1舟を譲っていただきました。
 上右端の写真が導入した杉舟で、前回頂いたものや隣の写真の初代のものと比較してみると、木材が厚みを増し、反り対策に幅の狭いものを2枚合わせて壁面に用いている他、各材の継ぎ目は補強のためシリコンで接着され、ボルトのねじ穴も木材で埋めて化粧される等、見た目の改良点も多くありますが、水を張った翌日からほとんど漏れが無く、さらに良い感じの使い勝手となっているようです。

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財前様(初夏の稚魚):広島県東広島市(2014年6月29日)
 トサキン保存会西日本支部の会員の財前さんの飼育場を見学させていただきました。
 旧自宅の庭で、当歳魚用の丸鉢が30個、2歳魚用のプラ舟等110Lが10個、親魚用のプラ舟140Lが6個の規模での飼育です。
 土佐錦魚の飼育は6年目で、今回中心的に見せていただいた稚魚についても、顔の輪郭から目が出ないように給餌等の管理に気を使っているとのことで、目先のある綺麗な顔と体型の稚魚が数多く見られました。
 南向きの庭全面で屋外飼育 稚魚:A-9  稚魚:A-7  稚魚:A-3
 稚魚:Y 稚魚:F  綺麗に管理された丸鉢  1鉢の尾数は少なめ
 稚魚はご自身の採卵の他にもいくつか育てられていて、きちんと番号で管理して違いを把握されていました。特にA-3、A-7、A-9は何れも後ろが大きく顔や体型も良く今後が非常に楽しみな魚でした。
 丸鉢の尾数はうちとほぼ同じ感じで、一般的に言えば少なめとなる15〜20尾程度で、行き届いた換水と丸鉢のコケ落としが徹底されている様子が印象的でした。
 また、普段は親用に用いている140Lプラ舟で、今年はタマミジンコの大量培養を行われていました。軒下の4舟では、常時いくらでも採取できるほどの量が順調に採れ続けているそうで、ブラインシュリンプの後にタマミジンコを与えると、稚魚の泳ぎが良くなるとのことでした。
 タマミジンコの培養  水面のタマミジンコ モルタル製の角鉢:3個   木製の杉舟
3歳雄魚 3歳雄魚  アユ餌の給餌  給餌量もうちと同量程度
 2歳魚以降は、プラ舟を主体とした飼育で、コンクリート製の角鉢や、杉の板で作った木製の杉舟を導入して、違いを検証されていました。
 また、帰り際の17時頃には、お願いして給餌をしていただきました。一度に与える餌の量としては、魚の尾数やサイズに対して、うちとほぼ同量のアユ餌を給餌されていましたが、昼時間にも与えることができるとのことで、魚の太みやサイズが増している感じでした。
   
親魚のプラ舟  2歳魚  2歳魚  2歳魚
2歳魚  2歳魚  2歳魚  2歳魚
 2歳魚は各舟に5尾程度入っていて、どの魚もそれぞれ良い特徴を持った魚を見せていて、これらの組合せで、来年以降もより良い資質の魚が生まれることを期待させる印象でした。
 これまでに、色々な方の飼育や管理を見させていただいていますが、土佐錦魚への考え方や管理に対して、個人的に非常に近いものを感じつつ、色々と積極的に試されている様子を伺って、大変良い刺激となりました。     

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