病名 |
写 真
(クリックで拡大します) |
症 状 |
対 策 |
えら病 |
エラを開き呼吸が速く沈みがちの魚 |
・初期は呼吸数が早くなり、群れから離れ、力なく浮かび気味となるか底付近でじっとするようになります。
・注意して観察すると体色は他のものより濃く、褪色前では黒っぽくなります。
・えらは開き気味となり、進行すると外縁の膜状部分が内側にめくれるようになります。
・エラぶたをめくって内部のエラを見てみると一部が白っぽくなり、激しい場合には白化部分が欠損する状態も見られます。
・水質の急変や、換水の遅れなどによる水質の悪化が原因となる事が多く、周囲への伝染力も比較的高いようです。
・春や秋に発生しやすいのですが、それ以外の時期でも時々見られます。 |
・基本的には、水質の悪化を疑って、全換水します。
・この特、特に慎重に時間をかけて水合わせをします。
・0.5%の塩水浴を行い、呼吸を楽にするためにエアーレーションを用います。
・加温が出来る場合には28℃まで徐々に上げると回復が非常に早まります。
・えら病は原因菌によって異なる様々な病気の総称です。薬浴は原因菌の特定が前提となりますが、現実的ではないので混合薬を用います。ただし、「全換水+塩+加温」を行なえば、数日で克服できる病気だと感じますので、個人的には薬の使用は出来るだけ避けるようにしています。 |
赤斑病 |
梅雨の長雨で赤斑病を発症した稚魚 |
・皮膚の下に赤い出血斑が見られる病気で、この赤斑は全身的に発生します。
・梅雨時期に発生しやすい病気で、長雨が続いた状態で、傷などが生じた抵抗力の弱いものから感染し、伝染します。
・初期は底や壁面に体を擦り付けるしぐさが見られ、体表面に内出血のようなピンクがかった部分が見られます。
・症状が激しい場合には、赤い斑点部分が広がって、傷口からは水カビが付く事もあります。
・写真のようにかなり激しい症状でも、食欲の低下や群れから離れるなどの一般的な病気のような元気のない様子はあまり見られませんが、急激に痩せてくるようです。 |
・原因菌はエロモナス属の細菌です。この細菌は水温の急低下や魚体の傷をきっかけに、抵抗力の落ちた魚に感染する菌で、水中には常在しています。
・水質が特に不安定に変わる場合に発生しますが、伝染力も比較的強いため、薬浴も効果的です。
・発生時には全換水を行い、慎重な水合わせをします。
・体表面の細胞を侵し、浸透圧機能を奪うため、0.5%の塩水浴も同時に行なうと治療効果が高まります。
・梅雨の晴れ間に2〜3日晴天が続き、水温が上がれば、自然と治癒する軽い病気だと言えます。 |
えらめくれ |
右側のエラぶたがめくれている様子 |
・えらぶたが外側にめくれたようになる症状で、初期にはエラぶた外縁の薄い膜状の部分が硬化萎縮して、上から見るとえらぶたの周囲が膨らんだようにも見えます。
・初期症状を放置すると、数日でえらぶた本体部分が外側に反るように変形したまま硬化し、治療ができなくなります。
・病気ではなく伝染もしない外的な障害です。 ・高温状態で発生し、水の傷みが重なるとさらに発生を助長します。
・30℃を越すような高温状態で、呼吸数が増すと、えら外縁部分の薄膜のタンパク質が熱変性し、硬化するためとの説もありますが、容器に対して収容尾数が多いと発生しやすいのも確かなようです。 |
・治療には薄いえらぶた外縁の膜状部分を切り取ります。この部分は再生しますが、褪色後の魚では白っぽくなるので完治しても少し見た目が悪くなります。
・治療には魚体を傷付けない様に先の丸くなった赤ちゃん用の爪切りバサミを利用するか、同じく女性の眉整形用の小型バサミを用います。
・えらぶた本体は再生しないので、初期の膜状部分が肥大している時期に発見次第治療を行ないます。 |
ガス症 |
当歳魚の尾に発生したガス症 |
親魚の胸ビレに発生したガス症 |
・尾びれや胸びれなど、ひれの表皮の下に気泡が生じます。
・強光の下で、水温が30℃付近まで上がると発生します。
・水の濁りが激しい場合には特に発生しやすく、青水や濁った状態は特に危険です。
・症状が激しく、ガスが表皮を破るほど発生を放置していると、ひれ先が溶けたようになりボロボロになります。
|
・水中にある酸素などが、高温によって、それ以上溶けれなくなり、表皮の下で気化して気泡となって生じます。
・傷んだ水や青水、コケは発生を助長するので、状態の良い水を保つように換水に努めます。
・容器に対して尾数が多いほど発生しやすくなります。
・初期(当日の早い時期)に発見した場合には、若干水温が低めの更水で全換水して、様子を見れば、翌日には完治します。
・予防のためにも、7月以降水温が上がりすぎる晴天時には日除けのため、12〜20cm幅の板を容器の上にかけておきます。
|
尾腐れ病 |
充血(左上)と白濁して割けたひれ先 |
・尾びれをはじめ、各ヒレの先端が白く濁ったようになり、次第に柔らかい膜状の部分が溶けたようになり、条を残してバラバラになります。
・ヒレの白濁部分の根元では充血が見られる場合もあります。
・カラムナリス菌の感染による細菌病で、この菌が出すタンパク質分解酵素により細胞が溶解することで症状が発生します。
・この菌は発生部位により病名の呼称が異なり、エラに寄生するとえら病やえら腐れ病となります。
・ヒレ先のスレ傷などが原因となって起きる病気で、水の傷みの激しい状態で発生しやすくなります。
・導入時や他の病害などでの傷が出来た場合には特に注意します。 |
・富栄養化した水で活発に活動する細菌のため、全換水を行ない、水質の改善を行ないます。
・有効な薬剤はオキソリン酸や、ニトロフラゾンなどフラン剤などです。薬浴の効果は高いので、これらを含む薬剤で薬浴します。
・薬剤の吸収には25〜28℃が最も良く、10℃以下や30℃以上では吸収が劣るので、水温が調節できる場合には、この範囲に加温します。
・カラムナリス菌は塩分に弱く、1%の塩分下では発育できないため、治療効果を高めるため、0.5%の塩水浴を併用します。
|
転覆病 |
冬囲い中に転覆した三歳魚 |
・腹部を上にしてひっくり返り、起き上がれなくなる症状の総称です。
・初期は頭を下にして、逆立ちしたようになり、潜りにくい様子が見られます。
・冬季の水温の低下に伴って、発生するケースがほとんどです。
・浮き袋のバランスや節機能が狂って生じるのだとされていましたが、脊椎内神経障害との研究報告もあり、原因は特定されていません。
・伝染性は無く、症状の発生後も摂食し、症状の悪化に伴い死を招くような事はありませんが、餌も十分にとることが出来ず、背びれの曲がりなど、体型にも崩れを生じて、次第に弱ってきます。
・末期には水底に横になったり、頭をこする様になり、摂食ができず、立鱗病などの2次感染症を併発する事もあります。 |
・肥満や、低温による浮き袋の一時的な障害が原因の場合には、水温を25℃以上に加温し、餌を控えて様子を見ると、初期であればほとんど回復します。
・当歳魚の冬までは、ほぼ発生は見られませんが、2歳以降で特に発生しやすいように感じます。
・丸手の金魚には比較的多く見られる症状で、餌を与えすぎて太らせすぎた場合も発生しやすいようです。
・特に発生しやすい丸手の場合には、普段から餌を控えめに飼育し、運動量を確保するように努めます。 |
白雲病 |
白雲病に罹り水面に力なく浮かぶ魚 |
・体表面やヒレに綿雲状のものが付く病気で、冬ごもり中や起こした直後に、水質の悪化した状態で、天候が不安定となる場合に発生する事が多い病気です。
・鞭毛虫のコスティア(イクチオボド)や繊毛虫のキロドネラが寄生して発生しますが、えらにも寄生するため、その場合にはえら病と同様に動きが極端に悪くなり、水面付近に浮遊するようになります。
・寄生された表皮部分は粘液の分泌が激しくなり、これが綿雲状の膜を作ります。この粘膜の下では寄生により表皮細胞が破壊され、次第に栄養分を失っていきます。
・初期症状では、体を底や壁面にこすり付けるようなしぐさが見られますが、次第に水面や水底でぼーっとするようになります。
・さらに症状が激しくなると、白雲状の粘膜が体中に広がり、充血も見られるようになり、全身に広がる頃には衰弱死を招きます。 |
・発症には水質の悪化を伴っていますので、感染を防ぐために、冬ごもり中でも状態の良い水で換水します。
・病原菌が2種類あるので厳密には対策は異なりますが、まずはコスティア対策にメチレンブルーを用います。0.5%の塩水浴を併用し、表皮の下で傷ついている細胞の浸透圧機能の回復を助けます。
・回復しない場合には、キロドネラを疑います。この菌が5〜10℃で旺盛に繁殖するため、翌春の繁殖への影響は避けられませんが、1日に5℃ずつ温度を上げて25〜28℃で加温するか、ホルマリン250ppmに30分間の短期薬浴させます。また、ホルマリンは塩との混用はできないので、薬浴後には塩水浴のみで回復を待ちます。
|
黒化症 |
ひれ先の黒い部分が発生した症状 |
・ひれ先や体表、腹部などが部分的に黒くなる症状で、冬季の低温期に発生します。
・急激な温度低下や飼育環境(水質、水温、飼育容器など)の急な変化によって発生するようです。
・冬囲い中や、冬囲いをとって青水から更水への切り替え時に特に発生しやすい症状です。
・発生には個体差が大きく、病的なものではないようです。
・褪色の戻りとの説もあります。
|
・温度が最大の要因のように考えられますが、最低水温が10℃以上に回復してくると自然と回復します。
・病的なものでは無く、伝染性も無いため、基本的には放置しておいて大丈夫です。
・事後対策としては、環境を安定して良い状態に保つ事ですが、冬ごもりやその後の起こし方の失敗が引き金となって発生するので、この時期の水質や環境の急変を避けてよい状態を保つように留意します。
|
立鱗病 |
鱗が逆立っている明二歳(3月末) |
・鱗が逆立ったようになり、松かさ病とも呼ばれる病気で、見た目にも体が丸く膨らんだように見えます。
・鱗の付け根部分にある鱗嚢と呼ばれる部分に、水溶物が溜まって起きる症状ですが、消化器の機能が低下して起きる場合や、細菌のエロモナス菌の感染によって発病する場合もあり、原因ははっきりしていません。
・体内の不要な水分や排泄物が外に出せなくなる症状で、消化器官の異常を伴うことが多いので、特に機能の低下する秋から春にかけての低温時期に発生しやすく、水質の悪化が発生を助長するようです。 |
・換水を行って、水質を改善します。
・消化器官の働きを助ける事も有効ですので、加温を行ないます。
・写真のような初期状態であれば、0.5%の塩水浴で回復しますが、細菌感染が激しく回復しない場合にはパラザンDなどの抗菌剤を用います。
・回復直後は活き餌など、消化の良いものを少量から与え始め、徐々に慣らせます。 |
ポップアイ |
異常突出した左目と出目気味の右目 |
・ポップアイ(出目症)の名前の通り、眼球が出目金のように飛び出したようになる症状です。
・餌の極端な過剰給餌や、水質の悪化が原因と考えられていますが、立鱗病と同様に、体内の不要な水分や排泄物が外に出せなくなる症状で、眼球周辺に水溶物が溜まって起きる症状です。
・消化器の機能が著しく低下して起きる場合が多く、給餌した人工飼料の脂肪分が変性していた場合や、成分が合わなかった場合の他、細菌のエロモナス菌の感染によっても発病する場合がありますが、原因ははっきりしていません。
|
・急性のものは病気ではなく、消化機能の低下から来る一時的な障害ですので、消化器官の働きを改善すれば通常に戻ります。
・対策としては、水質を改善するために換水して、浸透圧調整機能を補助するため、0.5%の塩水浴を行います。
・類似した症状に、給餌過多による慢性的な出目症状がありますが、この場合には治療は難しく、顔のつくり(骨格)も変形していれば、なおさら回復は困難です。日常の給餌を控え目に、条件の良い水質を保つように心がけて予防します。 |
不沈症状 |
人工飼料給餌後潜れなくなった当歳 |
・水中に潜れなくなり、水面から背中部分を出して浮かんでしまう症状です。
・懸命に沈もうとしても、すぐに水面に浮き上がり、水中にとどまる事が出来なくなります。
・人工飼料の給餌後、一時的に少し潜り難くなり、頭を下にして少し逆立ち気味となる事は通常でもよく見られますが、この状態が極端に激しく出た症状です。
・人工飼料を与えている場合に発生しやすく、餌の種類を変えた場合や、古く酸化しているもの、乾燥しすぎているものなどを与えた場合に発生するようです。
・同じ餌を与えても発症には体調や消化能力などの違いで個体差があります。
・フンも切れ切れに浮かぶようになり、摂食物の腸内でのガス化などが原因と考えられます。
|
・病気ではなく一時的な障害ですので、餌を水分を多く含むものにかえて給餌すると、翌日までには通常に戻ります。
・イトミミズなどの活餌を用いるか、品質の良い飼料にかえ、あらかじめ水を含ませて柔らかくして給餌します。
・高温期は水面から出ている部分が日焼けしたり、乾燥したりすることもあるので、十分な日除けを行ないます。 |